2.Armour Maiden

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 核廃絶ブームの末期、頭の中がお花畑と化していた当時の人々は二度と核の力には頼るまいと、そのとき地球上にあったウラニウムやプルトニウムなどの核物質を全てロケットに乗せて宇宙へと廃棄してしまったのだ。  そして二十三世紀の中期、残された燃料資源、水と食料をめぐってついに第三次世界大戦が起きてしまった。  そもそも核廃絶が進んだのも、平和思想の高まりによるものなどではなく、あくまで核兵器が前時代の遺物に成り下がってしまっただけの話なのだから当然といえば当然だ。  世界中を巻き込んだ戦いは百年を経てもなお続いた。  そのせいで残された化石燃料の消費がさらに加速したのは皮肉な話だが、かつて百億を超えた世界の人口はその大戦によって半分以下にまで落ち込むことになる。  もちろん死者のほとんどは戦地で散った男性だった。二十四世紀には男女の人口比は一対九になり、政府を含めて社会を動かす人材のほとんどを女性が占めるようになった。  戦争による死者と男女比のバランス崩壊――戦争の根本的な原因ともいえる人口の増加がそれらの要因によって解消されたのもまた皮肉な話だが、それでも人類は争うことを止めることはなく、二十五世紀の初頭にはついに化石燃料が完全に枯渇した。     
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