July 21,1861.Part1

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 「少佐……。 貴方の部下には悪い事をした。今度こそ、貴方たちの事は守ってみせよう。だから、あまり早まった行動はしないでくれよ」と、黒服の男。  「ああっ、信頼してるよ」  サートリス少佐は、静かに言う。  「出撃要請までは、ゆっくり過ごしてくれ。ヤツらが出れば、発煙弾や伝令で知らせがはいる手筈だ。南軍が使っていた光の明滅で合図する方法はコチラにはないからな」  黒服の男が、言った。  「私の事よりも、心配は〝怒れる紅毛〟のほうだ。出来れば戦いの場でもそばにいてやりたいが……。 南軍が二方面に〝ラミアルス〟を出せば別々に遊撃しなければならない」  サートリス少佐が、新しいコーヒーを用意すると、黒服の男に渡した。  「そのために、我々〝ピンカートン探偵社〟があるのだ。〝礼儀と契約〟そして、我々は決して眠らない。それが覚悟だ」  黒服の男が、コーヒーを受けとるとパイプの煙が夜の闇にまぎれて消える。        北部連邦ポトマック軍が、進軍を開始したのは深夜の二時をまわった頃である。  マクダウェル少将が麾下の軍勢、ポトマック軍第一師団の先頭にたって軍馬〝エクウス〟を前進させた。〝ソーブル〟を掲げて胸の位置で止めると、鼓笛隊が楽器を手にとる。  〝リパブリック讃歌〟または〝共和国の戦闘讃歌〟と呼ばれる行進曲が静かに演奏されるなか、エンフィールド銃、スプリングフィールド銃などを肩で支えて持ち、歩調を合わせて勇敢な行進をはじめる。  サートリス少佐たちは〝ラミアルス〟と〝ガングラン〟を立たせて敬礼させる。 〝第54ガングラン遊撃連隊〟は、少佐をはじめとして三名しか残っていない。しかも起動可能な巨大人型兵器は残存二騎となっていた。  夜が明けぬ時刻、巨人二騎は、仲間を失った悲しみを感じさせるかのように、うっすらとした月明かりに照らしだされる。  敬礼してすれ違う兵士たちは、〝ガングラン〟を見上げて操縦者である〝怒れる紅毛〟を、役立たずと白眼視していた。  サートリス少佐が、〝怒れる紅毛〟に視線をおとす。
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