July 21,1861.Part1

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 何かを見つけだそうと悩み、そして、苦しんでいる表情だったが、自分の生き方を考え模索する少年の気迫は、兵士たちの軽蔑に耐えていた。    ――それでも、兵士は進み、人は悩み、戦いの終わりは見えない――  敬礼で進軍する兵士たちを、見送るサートリス少佐がふと思う。  遠くへ消えていく歌声と軍靴の音だけが残った。        勝利と栄光を求めて、マクダウェル少将麾下の軍団はウォレントン・ターンパイクと呼ばれる街道から外れて、森林を抜ける道に踏みいってから数時間たっていた。  マナサス郊外のヨークシャー農場は、ウィルマー・マクリーンという一家が暮らしていた。マクリーンは、〝フェエドゥス〟に砂糖を納入するブローカーであったために、ボーレガード准将に屋敷を司令部として貸していたのだ。  「実に充実した朝食だな」  准将が、部下たちとともにマクリーン氏が用意してくれた食事を前にして言う。  焼きたてのジンジャーブレッド、レモンパイ、ピジョン(鳩)の肉と野菜、絞りたてのミルクなど軍人の胃袋を満たすには十分な量だった。  「世話をかけたな、マクリーン」と、同席する古強者ジョンストン少将が手袋と帽子をとると部下に預けて髭をなでる。  「いえ。むしろ、南部貴族連合軍の司令部として選んでいただき全く光栄であります」と、マクリーンが世辞を言う。  小太りの身体と、綺麗に香油で整えられた髪は頬で顎髭とつながっていた。紳士的な印象の男である。彼の後には妻をはじめ、家族と使用人たちが礼儀正しく並んでいた。  「ウィリアム大佐も、〝ラミアルス〟での戦いご苦労であった。こちらには同席されていないが、隊長騎を預かるユーエル准将にも労いの言葉を贈りたい」  ボーレガード准将が言う。  「ありがとうございます。しかし、ユーエル准将もこちらにお見えになられればよかったと思いますが……。 マシューズ・ヒル側にも〝ラミアルス〟を配備しなければならないと仰っておられましたので」と、ウィリアム大佐が言った。  利発的な〝人類種〟の青年である。  まだ、髭も生えていないほどで、誇りある南軍〝グローリア〟となり、南部貴族〝オプティマテス〟の特権階級として育った二十歳手前の若者であった。
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