神が××××日

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私が創造の神となって幾星霜。この場所に閉じ込められてから幾度となく季節は廻った。 何もなかった場所に星が生まれ、自然が宿り、生命が生まれ、人類が誕生した。 人間は幸福を祈り、争い、憎み合い、分ち、互いに切磋琢磨し合って、文明を築く。 争いは歴史となり。技術は高みへと昇る。 私が描いた未来。望んだ軌跡を描く。 そして人類が更なる高みを目指し、宇宙へと昇った。 だが夢であった地球外へ生きる場所を伸ばそうとしたとき、自然が許さなかった。 星の降った日。 権力者が星に殺された。 技術者が星に殺された。 未来の若者が星に殺された。 人類は半分の命を失った。生命活動域を半数失った。 それでも人は生きた。 生きて、生きて生き続けた。 だが、それでも自然は人間を許すことは出来なかった。 木々を削ったこと。草花を枯らしたこと。大地を水へと沈めたこと。海を陸地にしたこと。 人は自然に逆らい過ぎたのだ。大いなる自然が牙を剥き出し、人を地へ海へと呑み込む。 一人また一人と人類は減少。 大国が小国となり、都市だった場所が街になる。 街だった場所が、村になり、やがて瓦礫が積もった。 また一つ、国が滅んだ。 また一つ、島が消えた。 人類が衰退してから、数千年。 大地の一部は水に呑まれ、人が住んでいた形が残る跡には砂埃が吹き荒れていた。 この世に生命と呼ばれるものは、海を生きる魚や、動物。 世界の退化に、進化で対抗した生物。 そして――― 「こんにちは。ようこそ、美しき我が楽園へ、人類最後の人間さん」 生きる戦いで一人、生き抜いた人間。 星降るあの日も、一人生きた。 人類が淘汰された環境でも、不運にもかけられた呪いに生かされてしまった。 安寧を許されず、彷徨い続けた亡霊。 一人世界を渡り歩いた流浪の旅人。 崩壊する世界の中で、輝き続けた宝石。 崩壊する世界の中で、朽ち果てることのなかった身体。 崩壊する世界の中で、たった一人立っていた人。 滅びゆく世界を目の当たりに、呆然と立ち尽くし、歩き、そうして辿り着いた――世界のはしっこ。
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