1 金曜日 夕方

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   オフィス内は電話の取次ぎの声が飛び交い、とりわけ年配の社員が声を荒げる。書類という名の紙が世話しなく人から人へ移っていき、舌打ちと同時に引き裂かれる音も聞こえる。お世辞にも雰囲気がいいとは言えない。皆この状況に対し、白旗を上げたように呟く。  「仕事だから仕方ない」   国際物流業は、貨物の旅行代理店のようなものである。 無論、人間の海外旅行と貨物の輸送では細かな違いは多々あるものの、似た流れがあると思って差し支えない。主に顧客はメーカーや商社であり、輸出部という組織の傘下にある営業部と業務部の後者に我々は属している。  目下の悩みは、某自動車部品メーカーの輸出貨物の仕向け地のミスについてだ。正しくはアメリカのアトランタに輸出する手配をしなければいけないのに、ギリシャのアテネに手配してしまった。 
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