1 金曜日 夕方

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   金も無駄だが、このやりとりをしている時間も無駄だ。しかし、この無駄な誰かの尻拭いのネタは、飲み会を盛り上げる格好の起爆剤になる。 二十秒程の沈黙の後、ナミキは私に指示した。  「とりあえずお前は他の自分の仕事しな。どの道俺が吊し上げにされればいいだけだ。あ、アズさんのフォローも怠るなよ」 「了解です」  気にするなというのも焼け石に水である。アズは製造ラインの機械のように正確で早い作業をするベテラン派遣社員だ。私やナミキからの信頼も、並の社員より遥かに厚い。先ほどナミキが耳を疑うように確認してきたのも無理はなく、本人も心苦しいだろうが我々も等しく苦しい思いである。  この顧客の営業担当のグンジは私の同期入社の社員だ。本件に関して、グンジからの電話がかかってきたのだが、偶然それを出たのがアズだった。業務部がこの事故を認識した瞬間だった。
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