1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
今日は、特別な日だ。
なんて言ったって、今日で死ねるんだから。
今の言葉を聞いて、不思議に思った人もいるだろう。
死ぬことは幸せなことなのか?そう思った人もいるだろう。
しかし、今の私にとって死ぬことは最高の幸せなのだ。
「おはようございます。
もう、起きていらっしゃるのでしょう?」
いつもよりも早い時間にかかった声を聞いて、私は体を起こした。
「なんでいつもより早く起こしたのよー。
まだ眠いのに……」
「なんでと言われましても、今日が最後の日だからです。
朝ごはん、出来てますよ」
そう言うのは、死神のデス(って名前を付けたのは私)。
デスと出会ったのは、ちょうど1週間。
残業ばかりの会社に勤め、毎日死にそうになりながら働いていた私にデスは『あなたの命はあと1週間です』と言ってきた。
驚きもしたけど、この日々から解放されるならいいなと思い、ここ1週間仕事にも行ってない。
「何笑ってるんです?
朝ごはん、食べないんですか」
「食べない訳ないでしょ。
デスと会った日のこと、思い出してたの」
「あぁ、あの日ですか。
私も驚きましたよ、私が見えるのかって」
そう、死神は普通、人間には見えないらしい。
私の言葉に思い出したのか、デスはふふっと笑った。
「今日が最後の日ですよ。
何か、やり残したことはありませんか」
「もうないわよ。
親に会いに行った、旅行にも行った、友達にも会った。
やり残したことなんてないわ」
「そうですか。
私は、あなたが後悔なく旅立ってくれるのなら、それで良いのです」
デスは、晴れ晴れとした口調でそう言った。
「そうなの?
まぁいいや、ごちそうさま」
「はい。
今日は、どうされますか?」
「そうだな……散歩にでも行こうかな」
「かしこまりました、それではご支度を」
そう言われ、私は部屋に戻ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!