1,最後の1日

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今日は、特別な日だ。 なんて言ったって、今日で死ねるんだから。 今の言葉を聞いて、不思議に思った人もいるだろう。 死ぬことは幸せなことなのか?そう思った人もいるだろう。 しかし、今の私にとって死ぬことは最高の幸せなのだ。 「おはようございます。 もう、起きていらっしゃるのでしょう?」 いつもよりも早い時間にかかった声を聞いて、私は体を起こした。 「なんでいつもより早く起こしたのよー。 まだ眠いのに……」 「なんでと言われましても、今日が最後の日だからです。 朝ごはん、出来てますよ」 そう言うのは、死神のデス(って名前を付けたのは私)。 デスと出会ったのは、ちょうど1週間。 残業ばかりの会社に勤め、毎日死にそうになりながら働いていた私にデスは『あなたの命はあと1週間です』と言ってきた。 驚きもしたけど、この日々から解放されるならいいなと思い、ここ1週間仕事にも行ってない。 「何笑ってるんです? 朝ごはん、食べないんですか」 「食べない訳ないでしょ。 デスと会った日のこと、思い出してたの」 「あぁ、あの日ですか。 私も驚きましたよ、私が見えるのかって」 そう、死神は普通、人間には見えないらしい。 私の言葉に思い出したのか、デスはふふっと笑った。 「今日が最後の日ですよ。 何か、やり残したことはありませんか」 「もうないわよ。 親に会いに行った、旅行にも行った、友達にも会った。 やり残したことなんてないわ」 「そうですか。 私は、あなたが後悔なく旅立ってくれるのなら、それで良いのです」 デスは、晴れ晴れとした口調でそう言った。 「そうなの? まぁいいや、ごちそうさま」 「はい。 今日は、どうされますか?」 「そうだな……散歩にでも行こうかな」 「かしこまりました、それではご支度を」 そう言われ、私は部屋に戻ったのだった。
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