月を見ながら

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 最近子供達のあの一週間の情景を夢に見ます。事実はどうだったのかは今となっては、誰にもわかりません。私が作る決して終わらない夢です。毎晩眠ると、ぼんやり覚えていた夢の続きが始まります。残酷なドラマが夜毎、私の夢の中で繰り返されるのです。  あんなに憎らしかった子供達は、健気に私の帰りを待ち続けています。泣けば殴る母親に、まだ褒めてもらおうとしています。兄は妹を小さな手で抱きしめています。五月の夜はまだ、肌寒かったのでしょうか。そしてそのまま諦めたように二人は眠るのです。  当たり前ですが、こんな親でも子供達には、この世で唯一の頼りでした。こんな私でも必要な人間でした。夜には、開け放した冷蔵庫の中の小さなライトが、二人を照らしてくれたでしょうか。晴れた夜にはカーテン越しの窓から、月の光が入ったでしょうか。今更ですが、せめて真っ暗闇でなかったと信じたいのです。  夢の中で二人は、食べ物を求めて、必死で冷蔵庫や戸棚をあさっています。最後のビスケットも尽きました。3歳の子供には水道の蛇口をあける術はありません。  ドアのロックはわずかに届かない。  助けは来ない。神様もいない。 夜毎夢の中で繰り返される二人の願いは、永遠に叶う事がないのです。
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