息子の青春

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それもビデオに録画したアリサは、息子の番だけ撮影して閉会式を終えるとグランドを出て買い物してから帰宅した。後から帰った息子は風呂に入って疲れを癒した。夫が帰宅すると、晩ごはんを食べ始めた。食後にアリサが撮ったビデオを鑑賞した。「これがお前かい? 誰か一人コケたらみんなが崩れる。世間的にはどう見られようと、自分が与えられた役割を果たして結果が出る。これは、会社でも同じことなんだ」と父が言った。「僕は、少し大人になった?」と息子が答えた。「お前は一年生だから小学生に毛が生えたようなものだが、来年には体だけ大人になる。だが、父になるには、会社へ行って給料を貰わないとダメなんだ」と息子に言った。「僕は、これで給料を貰えるかな?」と父に尋ねた。「ある程度腕があればそれで食える。それには仕事を選ばないと意味がない。ミュージシャンとか自衛隊の音楽隊、音楽教室の先生とかだな。どうやれば飯を食えるようにな るか、それを自分で調べてみろ」と答えた。 団欒の時間を終えた息子は床に入った。その床の中で、警察音楽隊のパーカッション担当者としてコンサートに出演する夢を見るのであった。 それから息子は中学校を卒業して高校生になった。その学校では部活動では強豪である。商業高校であるので、商業検定や大会でも合格者を出している。 営業科に入学した息子は、学業と部活動の両立を目指している。校内では、未来の税理士や経営者、プログラマーが通る。学生とはいえ、玄人はだしが通るので新入生には恐れ多い。部活動でも過去に優勝や金賞を取っている。先輩達には頭が上がらない一年間を過ごすより他はない。 中間・期末試験に加えて検定試験を受けなければならない。それに加えて、次々と出演するコンクールでも良い成績を残さなければならない。 ブラック企業並みのスケジュールを黙々とこなして、家では父のように体を休めるだけになった。アリサは、疲れて帰って来る男たちのために体に良い献立を考えてそれをテーブルの上に出した。     
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