息子の青春

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息子が検定試験に合格して賞状を貰うとそれを額縁に入れてリビングの壁に飾った。コンサートを開催すると、チケットをあちこちに売ったり、それをビデオに録画して家族3人で鑑賞した。 男女交際に厳しい高校生活もあっと言う間に終わり、卒業式の日が来た。アリサは父兄席から見守った。式典が滞りなく終わり、教室へ入った。最後のホームルームを受けて外へ出ると在校生たちが待ち構えている。後輩たちが組む生バンドで迎えられた息子たちは、後輩から花束を貰ったり記念撮影したりしてお別れすると父兄が運転する車で帰宅した。 その晩は、パーティーをすることにした。ケーキやローストビーフを並べたテーブルに着くと、ローソクに火をつけた。しばらく幻想的な雰囲気に浸り、息子が火を吹き消した。その後、ビールやジュースをコップに注いで乾杯してから料理を食べた。食べ終わると卒業式を撮ったビデオを鑑賞した。 「お前は、子供には戻れない。これからは、手に職を付けて家を建てて自分の家族を持つことになる。お前一人で何人分の生活費を稼がなければならない。俺を頼ろうとは思うなよ。先に生まれた者は、先に死ぬもんだからな」と父は息子に言った。「大人になるとはそういうことなんだね」と息子は答えた。 こんな感じで両親と一緒に生活する日が終わりに近づいていることを知っている息子は、最後のパーティーを存分に楽しむのである。     
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