専業主婦

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アリサには料理・掃除・洗濯と同じことの繰り返しで、日が過ぎていく。たまに町内会での掃除やお祭りなどのお手伝いをしたり、息子が通う小学校の行事に参加するか、親戚の付き合いぐらいしか他に大した役割が来ない。夫が会社でどんな事をしてるか、息子が学校で何を学んでるか、話には聞いても自分の責任ではないので中身がよくわかってない。 退屈な日々を過ごしていくうちに、自分が年取っていくのに気がつかない。子供の頃は1年が長く感じた。結婚前で働いた会社では、人間関係の柵に耐えかねて「さっさと結婚して、こんな気狂いどもと縁を切りたい!」と長く感じるオフィスタイムの中でモヤモヤしていた。 あんなに嫌がっていたはずなのに、昔の会社の人を懐かしく感じる。そればかりか、会ってみたい気さえする。向こうも歳を取っていることはわかってるが、かつての若い顔を思い浮かべるのだ。夫からは「そんな昔の会社の人を思い出して何にもならんぞ! 今、お前を養ってるのはこの俺だから、そんな奴の事なんか忘れてしまえ」と言われている。それなのに、戻れない過去を思い出すのは、若さへの憧れなのか? アリサは、舅・姑・小姑・ママ友など面倒くさい人間関係から逃れたい思いで密かに武勇伝を語っていたのかもしれない。 幼い息子だけが心の拠り所とするアリサには、これから起こる反抗期など頭にもない。「おかあちゃん」と擦り寄ったり、泣きついたりする息子の温もりを忘れられないでいる。息子が他の子をいじめたり、女の子の尻を追いかけることはあり得ないと甘い考えに浸るのであった。     
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