28:嫉妬されたい

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「でんちゃーん、お酒なくなったぁ。おかわりぃ」 「自分で注文してくださいよ。俺は店員じゃないんですから。……ったく」  空になったコリンズグラスを目の前に掲げながら、くにゃりとしなだれかかってくる深見に呆れつつも、大河内は店員を呼ぶチャイムを押してやった。  今日は、フロントに異動が決まった山崎の送別会だ。いつもの焼き鳥屋の個室でスペリオールのメンバーだけが集まるはずだったのに、深見はどこで情報を聞きつけたのか、ちゃっかり顔を出していた。そしていつも通り、大河内の隣に陣取ってなんだかんだとちょっかいを出してくる。  大河内は深見を軽くあしらいながら、ちらりと若山のほうを見遣った。若山は大河内の視線には気づかず、一人で酒を飲みながらツマミをつつき、たまに寺田に何か話を振られては少し考えながら答えている。普段と変わらず、マイペースな感じだ。  こんな姿を誤解されやしないかと少し心配したのだが、若山はなんとも思っていないらしい。未遂とは言え、キスまでしそうになった深見と、恋人がこうやってべったり寄り添っているというのに、全く気にかけてもらえないなんて。それはそれで寂しいものがある。  いっそのこと、若山が嫉妬してくれるまで深見といちゃついてやろうかなどとやさぐれた気持ちになっているところへ、今日の主役である山崎が遅れてやってきた。
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