06:大河内の誕生日 その3

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 「大いなる田舎」と揶揄されるこの街の夜は恐ろしく早い。  一般の店舗はもとより居酒屋といえども午後十時、十一時に閉店してしまう店などざらだ。  駅前のロータリーから続く目抜き通りも車の往来も人影も少なく、昼間の喧騒が嘘のようにしんとしている。 「んで、でんちゃん、どこ行くの?」  深見は大河内と腕を組み、半ば撓垂れ掛かるようにして歩いている。そんな二人を後ろからやにやと見ている寺田。若山はさらにその後ろをトコトコついてきている。 「あー、『五美鶏』でいいっすよね」  大河内は投げ槍に行きつけの焼き鳥屋の名前を挙げた。 「なんだ、またあそこかぁ……。代わり映えしないなぁ」  不服そうに深見が口をつんと尖らせた。  退社時間が遅い彼らがゆっくり落ち着いて飲める店というと数が限られている。代わり映えしないのも仕方ないことなのだが、本当は小洒落たバーに行って若山と二人っきりで過ごそうと思っていた大河内にとって、それが叶わない今となってはどこで飲もうがもうどうでもいい気分だった。     
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