40:疑惑

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 ボウタイを外してシャツの襟元をくつろげ、ついでに腰を締め付けているカマーバンドも外した。ごりごりと首を回し、はぁーっとため息をついたら、ちょうど入れ違いに今から勤務にはいる大河内に見つかった。 「寺田さん、やけに疲れてません? 今日のランチはそんなに忙しかったんすか?」  少しバツが悪くて、「まぁな……」などと適当に相槌をうって誤魔化した。本当の理由は情けなさ過ぎるので、恋人との蜜月を謳歌中の男になど、あまり知られたくない。  大河内と別れ従業員用エレベーターに向かいながら、ポケットにつっこんだままになっていた携帯を取り出すと、昨日一緒だった女性陣からメッセージが届いている。全部で三人。五対五の合コンだったので、まぁこんなもんか、と思う。  内容はどれも、昨日は楽しかったという感想とお礼。それに、次は二人で会いたい、また飲みましょう、云々。お決まりの、判で押したようなお行儀のいい文言が並ぶ。そのせいか、どの子も印象が薄く、すでに顔もあやふやで思い出せない。     
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