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少し声を潜めた深見の手元を覗き込み、寺田も息を呑んだ。社員旅行の写真には違いないが、普通の記念写真ではない。いかにも隠し撮りといった感じで少しピントがぼけているものの、寺田と深見が一緒に露天風呂に入ったときのものだ。順番にパラパラと見ていくと、その時の様子が連続して写されている。
深見とは全く何もやましいことはしていない。ただはしゃいだりくつろいだり、話しをしながらふざけたりしていただけだ。それなのに、その写真の中では角度の関係か遠近感が曖昧で、向かい合って座っているだけのはずが、深見が寺田の膝の上に乗っているように見えた。その上、湯に隠れて下半身が見えないせいで、変な錯覚をさせられる。
「なんか、騎乗位でヤっちゃってるみたい……」
「あのな、お前他人事みたいに」
あまりにものほほんとした深見の言い方に、寺田は呆れて窘めた。
「だって、これなんなの? 意味わかんないし」
「まぁ、これをロッカーに入れた奴からしてみれば、この写真をばらまくこともできるんだぞっていう脅しっつか、警告のつもりなんじゃねぇか?」
寺田は深見の手から写真を抜き取ると、一枚一枚確かめるように眺めた。これを撮った人間は、何を思いこんな事をするに至ったのか。それを考えると、腹の中に何か重いものを詰め込まれたような気分になる。
「なんで、そんなこと」
寺田の言葉でやっと深見も事の深刻さに思い至ったのか声を落とし、顔を青ざめさせた。
「とりあえず、俺が探りいれてみる」
「え? 慶ちゃん、心当たりあるの?」
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