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自分の部屋に帰り着くと、靴を乱暴に脱ぎ捨て、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出しごくごくと喉に流し込んだ。ぐいと手の甲で口を拭い、ため息をつく。
冷たい水が胃に沁みわたったことで、少しだけ頭がはっきりしてきた。ごそごそとカバンから封筒を取り出し、改めて何枚かの写真を見返してみる。
深見と共にこの写真を初めて見た時からずっと、寺田の頭の中には一人の男の影が浮かんでいた。
まさかそんな、と何度も否定した。
いくら嫌いだからといって、真面目でまっすぐな性格の男がそんなことをするなんてとても信じられない。
だが、他の可能性をいくら考えても、寺田と深見に対してこんないやがらせをする相手は他に思い浮かばなかった。何かの間違いだと思おうとしても、実際、この手の中にある写真がすべてを物語っている。結局はあの男に帰着してしまう。
寺田はぐ、と歯をくいしばり、目を固く閉じた。
まさか、高橋がこんなことをするなんて――
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