41:過去とトラウマ

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 高橋は寺田の姿をみとめた瞬間、びくりと身をすくませた。  まさか、ここにいるとは思わなかったのだろう。当然だ。寺田が仕事を終えてスペリオールを出たのは、もう八時間も前の話。  合コンを抜け出して家に戻った後、いろいろ考えた末、ここロッカールームで待ち伏せるのが一番だと結論して、高橋の仕事が終わる時間を見計らって、わざわざ戻ってきたのだ。もやもやした気持ちを抱えたままではどうにも眠れそうになかったし、それならば、と思い切った行動に出てしまった。 「おつかれっす」  なるべく平静を装って声を掛けると、高橋は逃げ腰になり目を泳がせた。だが、最終的には逃げ場はないのだと諦めたように「おつかれさまです」と応じた。  お互い気まずい時間を長引かせてもしょうがない。高橋だって寺田に見られながら着替えたくないだろう。そう思い、寺田は早速本題に入ることにした。  ベンチから立ち上がると高橋のもとにゆっくりと歩み寄り、写真を目の前に突きつける。 「これ、撮ったの高橋さんですよね?」 「え、なに?」     
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