41:過去とトラウマ

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 子供のようにぶんぶんと首を横に振りながら必死に否定する高橋が嘘をついているなどとは到底思えず、疑惑の念がすうっと消えていった。高橋じゃなかったという安堵と同時に、高橋を疑ってしまったことへの罪悪感が湧き上がる。 「まじで、高橋さんじゃないんですか。俺はてっきり……」 「僕は別に、寺田君と深見君がつきあっていようが、それは個人の自由だし、気になんかしない……!」  寺田は一瞬、高橋が何を言っているのかわからずぽかんとした。だが次の瞬間には、これが高橋が撮ったものではないのなら、何の説明もなくこんな写真を見せ付けられれば、本当にヤっちゃってると誤解されてもしかたないと気づいた。 「いやいや、これは! 全然そういうのじゃなくて、たまたま角度とかそういうのでそういう風に見えちゃってるだけで! 第一、俺と深見が付き合う訳ないでしょうが!」  しどもどに説明しながら、先ほどの高橋の赤面にも納得がいった。精神的に追い込まれていたとはいえ、あんなポルノ紛いの写真をいきなり人様に見せ付けた自分をぶん殴ってやりたい。自分の恥部を曝け出す変態と同じではないか。 「で、でも僕の歓迎会の時だっていちゃいちゃしてたし、大河内君が深見君に絡まれた時『恋人に言いつけますよ』って君に振ってたし。それにいつも食堂で仲睦まじく食事してたり! ばれてないと思ったら大間違いなんだからな! 自分ばっかり、ず、ズルいじゃないか!」     
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