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「んー、そういう事になるかなぁ……」
大河内は少し考えてから、意を決したように再び口を開いた。
「実は、秀ちん寝てる隙に試しにこっそりキスしてみたんです」
「やっぱ、してんじゃん……」
ひねり出すようなくぐもった寺田の声がきこえたが大河内は寺田の顔を見ることができなかった。
「あー、まぁ……」
うつむいたままバツが悪そうにぽりぽりと首の後ろを掻く。
「気持ち悪いとかは別に思わんかったけど、やっぱり、さらにその先に進みたいとかなくて……。だから、俺、それで安心したんです」
「安心?」
「つまり……すごく秀ちんのことが気になって、いつも一緒にいたいと思うけど、それはこいつがどっか頼りなくてほうっておけないせいだ、って思うことにしたんです。そうしておけば、安心して、秀ちんを構えるかなって」
「その言い方だと、既に答え出てるっぽく聞こえるけど?」
「まぁ、もう少し、わからんってことにしといてください」
大河内は普段は見せないような大人っぽい顔でふっと笑った。
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