早苗さん

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早苗さん

今日は特別な日だ。 だって、今日は俺が死ぬ日だから。 朝焼けを会社の屋上から眺めながらそう思う。 うちの会社の入っているビルには今時珍しい屋上がある。 何もかもがしょうも無く無く思えた。 毎日毎日会社に来て、それで、仕事をして。仕事と呼べるのかも分からない。 わざわざ到底一日では終わらない仕事をふっては翌日罵倒する。 最初のうちは抗議していたけれどもう、そんな気力も無い。 どうせ怒られるなら謝るだけ謝ってただただ残業して仕事をしていれば済むのだ。 だけど、それももう限界だなと夜中の三時ころ灯りの消えた社内でPCのディスプレイを見ていて漠然と思った。 思ってしまったら、もう駄目で何もできなくて屋上まで来てしまった。 碌にセキュリティーの入っていない会社だったので朝方でも簡単に屋上に出られる。 フェンスを乗り越えてぼんやりと立っている。 靴をそろえて脱ぐなんて思い浮かばなかった。 「ねえ君何をしているの?」 声をかけられて驚く。 こんな時間にこんな場所で声をかけられれば当たり前だ。 それでも、それだけなら足を踏み外しそうにはならなかったと思う。 今から飛び降りるつもりなのに足を踏み外しそうになって慌てるなんて滑稽だ。     
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