王子様のような人

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中学1年生入学式。 桜の花びらがはらりと落ちていく中、私、赤月里絵(あかつきえり)はびくびくしながら人ごみをかき分け友達を探してる。 「ち、ちーちゃん……どこ……?」 大きな声も出せなくて小声で友達のちーちゃんを呼ぶけれど、返事が返ってくることはない。 キョロキョロと必死に探す。 どこにいるの? 周りを見渡したけれど、人混みで友達の姿を見つけることは出来なかった。 「きゃっ……」 その瞬間、誰かにドンっとぶつかられて尻もちをついた。 「あ、悪りぃな。大丈夫?」 倒れ込んだ私を覗きこんだのは男の子で、私に手を差し出してくる。 その距離が私には近すぎて、思わず後ずさりしてしまった。 「だだだだ、大丈夫ですっ!」 サーっと血の気が引いて、ドクドクと心臓が音を立てる。 これ以上は限界だ。
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