王子様のような人

20/23
前へ
/45ページ
次へ
「あっ、」 目の前の人を見て思わず声をあげた。 そこにいたのは大神くんだった。 「ごめんね、大丈夫?」 「うん、こっちこそごめんね」 すっと手を差し出す大神くんは、私がぶつかったのにも関わらずとても優しい。 本当に王子様みたいだ。 (あれ、そういえば震えてない……) 大神くんが近くにいても、不思議と震えは起きなかった。しかし、差し出された手に触ることは出来ない。 「大丈夫です、ありがとう」 そうやって自分で立ち上がろうとした時、彼は差し出した手をぐいっと私に近づけた。 「……っ!」 「手、使いなよ」 手を伸ばして来る大神くんの声は少しだけ低い。ピリっとした雰囲気の中、失礼になってはいけないと恐る恐る手を伸ばす。 「……っ」 だけどやっぱり触れるのは無理で、手を引っ込めると彼は深くため息をついた。 また、人を嫌な気持ちにさせてしまった。 「ご、ごめんなさい……っ」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加