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「あっ、」
目の前の人を見て思わず声をあげた。
そこにいたのは大神くんだった。
「ごめんね、大丈夫?」
「うん、こっちこそごめんね」
すっと手を差し出す大神くんは、私がぶつかったのにも関わらずとても優しい。
本当に王子様みたいだ。
(あれ、そういえば震えてない……)
大神くんが近くにいても、不思議と震えは起きなかった。しかし、差し出された手に触ることは出来ない。
「大丈夫です、ありがとう」
そうやって自分で立ち上がろうとした時、彼は差し出した手をぐいっと私に近づけた。
「……っ!」
「手、使いなよ」
手を伸ばして来る大神くんの声は少しだけ低い。ピリっとした雰囲気の中、失礼になってはいけないと恐る恐る手を伸ばす。
「……っ」
だけどやっぱり触れるのは無理で、手を引っ込めると彼は深くため息をついた。
また、人を嫌な気持ちにさせてしまった。
「ご、ごめんなさい……っ」
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