第11章「薄衣」

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…講義が終わったあと、少し時間が余ったので 俺は大学のカフェに行き、スマホでネットサーフィンをする。 お気に入りは都市伝説板のスレッドで、適当なものを漁るのが結構楽しい。 そうしていくつかのスレッドをポチポチと開いて見ていると、 ふと、一つのスレッドに目がいった。 『速報:一反木綿が大量発生?日本上空に布が飛び交う!』 一反木綿…布…?一反木綿は妖怪の名前だった気がするけど…。 俺は、その文字にどこか覚えがありつつもスレッドを開けてみる。 とたんにリアルタイムであろう、大量の書き込みがあふれ出す。 『見た見た…!ウチの町の上空にもいた。一メートルほどの変な透き通った布。』 『俺の家の屋上にも、アンテナに引っかかっててマジワロス。』 『うちだけこない…。』 『ひろって見たけどホントに布かどうかもわかんない。専門家呼ぶべき。』 大量の書き込み、大量の目撃情報。 何枚か現地で撮ったであろう写真も投稿されている。 見ればそこにあるのは先ほど子供たちが構っていた布で、 それを見て少し驚く。 …俺の町だけじゃ、なかったんだな…。 そんなことを思いつつスレッドを見ていると、 ふとこんな書き込みを見つける。 『…これ「メンナシ」に聞く事案じゃね?』 それは、タイムラインに一瞬だけあらわれて一瞬にして消えた。 しかし、その文章だけが異様に俺の印象に残った。 俺はスレッドを閉じるとネットの接続を切り、スマホをポケットにしまう。 …『メンナシ』ね…。 それは別のスレッドでもてはやされた都市伝説。 心霊関係専門の探偵。 決して、人前に顔を出さない顔無き探偵。 でも俺は知っている。 その人が現実にいることに。 その人と話ができる事に。 …また、お願いしてみようかな。 俺は自分のスマホの電話帳を見る。 普段なら、探してもそこに『メンナシ』の番号は出ない。 …しかし、このときは違った。 …数桁の番号。 『メンナシ』と登録された番号。 俺はそれを見つけると、 番号をタッチし相手が電話に出るのを待った…。
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