第11章「薄衣」

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そう言うと、通話は勝手に切れてしまう。 俺は静かになったスマホを見た後、ポケットにしまい前を見る。 …そこには、まだ一枚の布が看板に引っかかっていた。 そしてその向う。 二人の兄弟が去って行った方とは反対方向の電柱に 同じような布が引っかかっているのを見つける。 …布を重ねる…か。 俺は先ほどの布を看板から外すと電柱のあたりに自転車を止め、腕を伸ばす。 電柱の登り棒に引っかかっていた布はいともあっさりと外れ、 二枚の布は俺の手に収まった。 …重ねる…ね。 俺は、二枚の布をそっと合わせてみる。 すると、不思議な事が起こった。 そこにあったのは二枚の布。 何の仕掛けも無い二枚の布だ。 しかしそ、れを重ね合わせた瞬間、ふいに溶け込むようにして一枚に合わさった。 そして持ってみると、それはほんの少し厚みを増した一枚の布へと変化している。 …え?え?これって…。 突然のことに困惑する。 そのとき、後ろの方で子供の声が聞こえる。 「わー、また重なったー。これで18枚だよう。」 はしゃぐような子供の声。 しかし目の前で起こった事は異常としかいえず… そして俺は呆然としながら道の端にたたずんでいた…。
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