第12章「追駆」

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…私は、逃げている。 狭い土管の中。 腰を屈め、這いつくばりながら逃げている。 …ここがどこかはわからない。 しかし、ここを抜ければ生け垣のある場所へと出れる。 そこへ行けば、この状況から逃げることができることを私は知っていた。 …しかし、追って来る。 後ろからくるそれはいつまで経っても追いかけて来る。 ズズッ…ズズッ…ズズッ… 耳に響く相手の音。 這いつくばりながらも、こちらを追う音。 私は後ろを振り返れない。 ともかく外に出なければならない… そして気づく。 気づいてしまう。 その土管の中に出口が無い事に。 どこまでも続くよう、連結されていることに。 私は絶望する。 逃げられない事に絶望する。 そのとき、背後に迫って来た何かが、 今まさに私の背中に手を置こうとしていた…。
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