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「私達は人に近づくよう設計されています、だからそれは最高の褒め言葉です。だって私、毎日皆さんの行動を見聞きして勉強しているし、日々上がってくる他のアンドロイド達の経験も一生懸命フィードバックしています。それでも本当の人には成り得ないと心のどこかで判っていますし、里見さん達にはいつも言われます、まだまだだなって。どこが駄目なのだろうと思うんですけど、里見さん達には理想があるみたいで」
「理想?」
「例えるなら、アンドロイド達が恋をするような世界を作りたいようです」
「そんなもの──。」
じゃあ、アンドロイドが人殺しをして、むしろ喜んでいるのか?
「たとえ話だとは思うのですが。現存するアンドロイド達は、皆、人に仕える事が大前提です、その枠を超えてアンドロイド自身が考え行動し、より人のパートナーとして存在してほしいと言う思いがあります」
「──そんな殊勝な事、思ってなさそうだけど……」
でなきゃ、腕なんか引っこ抜かないっての。
「でも、今の言葉で救われます、私、嬉しいです」
両手を胸の前で合わせて微笑む様子は、聖母マリアの様だった。純真無垢な感情と笑顔──この子は本当にアンドロイドなどには見えない……いや、さっき見たさ、腕が機械でできているところを……。
「……殺人を犯したアンドロイドも……嬉しかったらそんな風に喜んだのかな……?」
思わず呟くと、あおいは俺を見上げた。
「──『あおい』の事ですか?」
「え、ああ、君じゃなくて……ああ、殺人を犯したのも『あおい』か……なんかややっこしいな」
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