【糸口】

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「仕方ありません、アンドロイドは人に仕える存在で、所有者が名前を決める事になっているので、サイバーロボッツ社のアンドロイドは統一して『あおい』と称したんです」 「それで君はフィアなんて愛称が」 「──好きではありません、番号ですから」 あおいはとても淋しげに言った。 そう、だよな。まるで囚人みたいだよな、ドイツ語で『四』と言う意味だ。 「でも、みんなが名乗ってる『あおい』よりは……」 「でも私に設定されているのは『あおい』なんです。『フィア』ではないんです」 「そ、そっか……」 時代、時代で流行る名前はある、年号が『昭和』になった時は『(あきら)』や『和子』が増えたと聞いた事がある。だからみんなと一緒と言う事は、ままある事だ。 それをいちいち文句を言わないだろう、子供の頃から呼ばれていれば愛着はあるだろうから。 「あおい……」 思わず呼びかけると、あおいはくいっと顔を上げて、目に潤ませたまま、無理矢理微笑んだ。 それが妙に可愛かった。 「名前を呼ばれるのは嬉しいです。私にフィードバックされた方の記憶にもあります。その方も初期設定の『あおい』のままお仕えしてました。ご主人はまだ幼い、6歳の女の子でした。」 「え、そんな子供がアンドロイドを?」 「はい、サイバーロボッツ社が試験的にキャンペーンと称してアンドロイドを大量に発送したんです」 ああ、30年前の話、か。     
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