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「それでもお父様は『あおい』を返却することは考えなかったようで──その時の『あおい』の喜びは、私の中にあります。『幸せ』の意味をはっきり理解した瞬間でした」
「……そっか」
ご主人様の傍に居るのは、ロボットでも幸せなのか。
「主人の設定をお父様に変更しました、それでも娘さんの拒絶はあったようですけど……お父様も娘さんの手が離れた事は感じたんでしょう。より『あおい』との時間を大事にしてくれました。」
「……どんな時間?」
「その『あおい』はセクサロイドではありません」
あおいはにこりと微笑んだ。
「でも、お父様に求められるままお相手をしました。その時の『あおい』はお父様の淋しい心を癒してあげられる喜び、お父様に愛される喜びに満ち溢れていました。」
「──それは、君がしていることと、一緒って事か?」
俺はあえて遠回しに聞いた、あおいは淋しそうに微笑む。
「似て非なる、だと思います」
似て非なる?
「私は『おもちゃ』です、愛される意味が違う。でもあの『あおい』は本当に身も心も愛する対象として必要とされていたんです。彼女の心を感じる度に羨ましいと同時に嫉妬もします。私は永遠にこの場所に閉じ込められ、皆さんの研究対象でありおもちゃとして扱われるのだと思うと……」
言うと唇を噛んで俯いた。
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