【糸口】

11/15
前へ
/81ページ
次へ
待ってくれ、ここまで葛藤する思考の持ち主がアンドロイドだと? 他人の感情を自分のものにしながらも、それが他人と判っていて羨望と嫉妬があるんだ。 「……最後はまだ若い彼がガンを患い、その闘病を看病していました、その時の愛おしさと言ったら……。その時の気持ちは他の介護アンドロイドにも反映されています。代われるものなら代わりたい、そんな気持ちです。彼が亡くなった時は、自分が死ねないのが辛いとさえ思って……」 「そこまで思うアンドロイドは、返却後どうなるんだ?」 まさか、と思った、そこまで思考するアンドロイドが今回事件を起こした『おあい』と同一人物だとしたら──。 「私達は所詮機械です、『ブラックボックス』をリカバリーすれば、全く別人として再出荷されます」 「リカバリーも、まっさらになる訳じゃないだろ?」 あおいは困ったように微笑んだ。 「……だとしてもごめんなさい、私ではそこまで追えません」 「重要な事だ、もし経験を積めば積むほど、人に近づくのなら──」 主人を転々とし、ある日突然好きか嫌いかで容易く殺人を犯しかねない。 「──シリアルナンバーの、照合ができれば同じ個体かの判断ができます」 「シリアルナンバー?」 「『ブラックボックス』に刻印されています、それ自体は開けないと判りませんが──返却された『あおい』のデータは、抽出可能ですけど」     
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加