【糸口】

12/15
前へ
/81ページ
次へ
「──欲しい!」 「……え?」 思い切り怪訝そうな顔をされてしまった。 「あ、いや、ごめん……その、どうしてそこまで人に近づけるのか、逆に何故そこまで人に近づかない個体があるのか、それを知りたいかなあ、なんて……」 うう、苦しい言い訳だ、でもあおいはきょとんとした後、微笑んだ。 「谷屋さんも、開発に携わっているんですもんね。やはりアンドロイドはより人に近づいたらいいと思いますか?」 「うーん」 限度は、あるなあ……? 「でも……君を見てると、何処が人とアンドロイドに差がなんだろうとは、思うかな……?」 言うと、おあいはぱあっと明るい笑顔を見せた。 「返却された個体とは言え、極秘データです、他所へは決して出さないでください。それを約束してくださるなら」 「うん……」 俺は曖昧に返事をするしかなかった、だって野村さんに渡す前提だ。 「データ量は膨大ですけど」 「あ、これ。これに入るかな?」 USBメモリをポケットから差し出した、勿論こんなもの持ち込み禁止だ、でもボディチェックがあるわけではない、俺はいつでも仕事ができるように隠し持っていた。     
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加