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あおいは目の前で自分のシャツを捲り腹を出した。臍の少し上を指を揃えて押すとカチャっと言う音がして僅かに浮く。十五センチ四方のその肌の上側を持って捲る様に上げると、小さなモニターとボタン類が見えた。
ああ、やはりこの子は機械なんだと、改めて思い知らされる。
しかし指は生きた人間のように繊細な動きで、モニターの脇のジャックにメモリを差し込む。
何の音もしない、何の変化もないのに、ものの十数秒で彼女はメモリを引き抜いた。
「どうぞ」
「あ、ありがとう……」
こんなに簡単なのか?
「あの……もう一人の『あおい』のデータは……」
それが本来の目的なのだが……。
「それは鍵がかかっていて私からはアクセスできません。恐らく返却されるなりの処分が決まらないと抽出は無理かと」
あーなるほど。
「ごめん、ありがとう。これで勉強するよ」
俺はありもしない事を言った。
「いいえ、お役に立てたなら嬉しいです」
そして俺は彼女と別れた、彼女はまだ仕事があるらしい。
*
俺は藤沢市内のアパートに帰ると、早速野村さんに電話をした。
アパートも携帯電話も、野村さんが用意してくれたものだ。
『首尾は?』
野村さんは開口一番言った。
「まだ、容疑者のデータにはアクセスできていません。でもいくつか情報を仕入れました」
ブラックボックスの存在と、最近返却されたと言う『あおい』のデータは手に入れた事を伝える。
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