【激情】

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何故だ。 昨日も今日もあおいの姿を見ていない。 俺は不安になる、やったことがやったことだ、きっとバレたら処分があるだろう。 速攻バレた? 処分ってなんだ? 俺のように退職を迫られる──いや、アンドロイドにそれはないだろう。 ロボットだ、初期化されて違う人物として生かされる? まさか──壊されて存在そのものを消される、とか──!? どうしようもない焦燥感に襲われていた。せめてあおいの今を知りたい……! 俺は唯一の接点である品質保証部の長島を訪ねる事にした。 部屋まで行くと、幸いノックなどしなくてもドアが開いて女性が一人出て来た。 「すみません、谷屋と言います、長島さんとお話ししたいんですけど!」 俺が食い気味に言うと、女性は俺の名札を確認してから、中へ声を掛ける。間の抜けた「へーい」と言う返事が中から帰ってきて、笑顔で俺を中へ入れてくれた。 遠くの席で「ああ、君か」と長島が手を振っている。 「長島さん! あおいに逢いたいんですけど……!」 俺は何も考えずに鼻息も荒く言っていた、長島さんは驚いたように目を見開いてから、冷静に溜息を吐いた。 「ああ、あおいか……もしかしたら、もう会えないかも知れないな……」     
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