22人が本棚に入れています
本棚に追加
横に張り出したダクトへ入り、とりあえず体を休ませる。階段で上がるにしても疲れる高さまで、全身使って上がって来たんだぜ? せめてランニングくらいしておけばよかったと、こんな時に後悔するとは。
ここは幹部達の部屋より、一つ上のエリアの筈だ……体力が多少戻ったのを感じて、俺はほふく前進で進み始める。明かりが漏れる換気口は少ない、いくつめかのとき、やっと姿を見つけた。
あおいは椅子に座って、膝の上の手をじっと見つめている。
「……あおい!」
小さな声で呼んだ、あおいはきょろきょろと声の主を探しているようだ。
「あおい、ここだ」
呼ぶとくいっと顔を上げて俺を見つけてくれた、すぐに嬉しそうに破顔する。
「あおいだけか?」
「はい」
「部屋に監視カメラや盗聴のたぐいは?」
「ありません」
「あおい」
俺は換気口を塞ぐ金網の隙間から指を出した、あおいは椅子を換気口の真下に持ってくるとその上に立つ、互いの指を絡ませた。
「ごめん、俺の所為だな」
あおいは笑顔で首を左右に振った。
「いいんです、私、谷屋さんのお役立てて嬉しい。」
役にだなんて──出逢って間もない俺にまで尽くすのか? 罪の意識も薄いだろうに、なのに俺の所為であおいが死……いや、破壊されるなんて。
「──逃げよう」
俺は提案した。
「……え?」
「このままじゃやばいんだろ? 一緒に逃げよう」
「でも、谷屋さんが逃げる理由が……」
最初のコメントを投稿しよう!