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それは俺自身に対する言葉だった。
「存在が、なくなるんだぞ?」
それを、嫌だと思っているのは俺自身、だ。
あおいがいなくなるのは嫌だと思った、どうして?
壊われたおもちゃを捨てるのは間違った事じゃない、よほど思い入れがあるおもちゃなら手を尽くして直すだろうが、そう言う道を辿るおもちゃはどれほどある?
そしてあおいは俺の物ではない、所有者であるサイバーロボッツ社が廃棄と決めたならそうすればいい、俺が危険を侵してまで助ける必要など……。
あおいはにこりと笑った。
「谷屋さんに会えて嬉しかった。」
嬉しいことを言ってくれた、俺もあおいに出逢えて嬉しいのだと認識した。
「谷屋さんは私を人のように扱ってくれました」
合成とは思えない声が鼓膜を振動させる。
「とても嬉しかった、だからあなたのお役に立てたなら本望です。できればこの気持ちをフィードバックしたいのですが、そうしたらあなたの事を知られてしまうと思って……残念ですけど、この記憶も私と一緒に消えます、ごめんなさい。ありがとう、谷屋さん、最後に幸せと言う感情を教えてくれて。さよなら、谷屋さん、ありがとう」
「駄目だ」
俺は気づかぬうちに言っていた。
「逃げよう」
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