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俺は定時までいようかと思っていたが、あおいがいなくなったのが判って騒ぎになるのも嫌なので、腹が痛くてお尻から滝が、などと言い訳して早退させてもらう事にした。
幸い、正門の警備員に中身を精査されることなく、俺は外に出ることが出来た。
*
戻ったのは、横浜のマンションだった。藤沢のアパートでは危険なのは明白だ。
玄関でキャリーバックを開けると、あおいは辺りを見回した。
「ここが藤谷さんのお宅?」
「ああ──ふふ、あおいの部屋より狭いな。」
「そんな事……素敵です。」
靴のまま上がろうとしたので、注意した。そっか会社のビルに住んでたら靴なんか脱がないのか。
「適当に座って。なんか飲む……ああ、食事は要らないのか。」
水分は体内のタンクに溜まって、適宜排出される、勿論尿としてではないぞ、涙としてだ。
「私は食べませんが、少しなら作れますよ? お腹が空いてるなら作りましょうか?」
「そっか、助かる……あ、でも冷蔵庫が空っぽだ。買い物に行くか?」
「はい。」
二人で出かけた、あおいはスーパーが初めてらしくきょろきょろと明らかに挙動不審だった。
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