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基本的と言っていい事柄は判るようだが──見た目だけで野菜の種類も魚の種類も判別していた。でも店員がカートに積んでパック詰めの肉を運ぶ様子を楽し気に見ていたし、冷凍食品が詰まった大きな冷凍庫も初めて見るらしく「なんですか、なんですか!?」と聞いていた。
こんな時、『少し幼い設定』なのは有り難いな、あどけないあおいの仕草を、皆好意的に見てくれているようだった。
レジでも、店員が手際よく機械に通す作業を「はあああ」と感心して見ていた。
お金の概念はないらしく、今回初めて食べ物がお金と交換して得られるのだと判ったようだ。
家に帰ると狭いキッチンで二人で並んで食事を作った、そしてあおいに見つめられながら食事を摂る。
「美味しいですか、藤谷さん?」
あおいがニコニコして聞いてくる。
「うん、美味しい。」
本社のサーバーと繋げば世界中の料理が作れると言っていた、でも今は回線はオフにしている、でないと居場所が知られてしまうからだ。それでも基本的なレシピはインプットされているらしい。
「よかった。」
ああ……なんか、新婚みたいで、いいなあ……。
「あのさ。」
「はい。」
「隆信って呼んでよ。」
「はい、隆信さん。」
「隆信でいい、あおい」
俺は箸を置いて、あおいの手を握って言っていた、恋人なら呼び捨てくらいするだろうから。
あおいは微笑んで呼んでくれた
「隆信」
言ってくれと言っておいて、呼ばれた途端、どき、っとした。
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