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「それから焼却処分です、爆発だけでは痕跡が残りますから。それも周囲に燃えるものがなければ小規模で終わるはずです。どこで装置が作動するか判らないのに、大爆発、大炎上はできませんから。」
全ては体内に走るカテーテルに溶剤が流れる事で生じると、あおいは冷静に言った。
そんなことまで理解して生きてるなんて──。
俺はあおいを抱き締めていた。
「あおい、逝くなら俺の元で逝ってくれ。」
あおいは俺を抱き締め返してくれる。
「……隆信……。」
「どうせ死ぬなら、俺の目の前で。」
何故わざわざ本社に戻る必要がある? 俺はあおいの亡骸すら抱けないのか、そんなのは辛すぎる。
「隆信、私は死にません、そもそも生きてませんから。」
「あおい。」
下らない事を言うあおいの肩を掴み、目をしっかりと見た、あおいは何事かと見返す。
「お前は生きてる、今、ここで、俺と生きてる。」
言うと、あおいの目から涙が零れた。
綺麗に光り輝く涙が、あとからあとから、両頬を流れ落ちる。それにあおい自身が驚いていた。
「私、泣いている……? まだ貯水タンクはいっぱいではないのに、どうして……。」
「哀しいんだろ? 人は哀しいと泣くんだよ、俺と離れたくなくて哀しいんじゃないのか?」
「いいえ、むしろ今感じているのは嬉しい気持ちです……隆信に生きていると言われて……。」
「じゃあ、それは、嬉し泣きだ。」
「嬉し泣き?」
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