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そんな感情が理解できないのか、あおいは可愛く首を傾けた。
「隆信、私達が泣くのは生理現象ではなくて、体内に溜まった水分を排出する為で……。」
「違う。」
泣きながら笑うあおいの頬を撫でていた、温かく感じる頬を。
「あおいは今、心と体がひとつになって、その感情を顕す方法のひとつとして泣いてるんだ、それは単なる水分の排出なんかじゃない、大切な生理現象だ。」
そんな言い方すら情緒がないけれど。あおいは間違いなく心からの涙を流しているんだ。
「隆信……。」
あおいが震えた声で呼ぶ、泣きながら微笑む顔が綺麗だった。
俺は涙をキスで拭った、本当ならしょっぱい筈の涙だが、あおいのものは無味無臭だった。
「心が温かいって、こういう時に使うんでしょうね……私は何処に心があるか判りませんけど……。」
そう言って俯く、俺はその胸に触れていた。
「ここだ。俺も実際にどこにあるか知らない、でも、人はここが温かいと思う。」
「ここに……心が……。」
呟いて、そっと俺の手に手を重ねた、温かい手だ。
「私……人に近づけたのかしら?」
「心は人間そのものなのかも知れないな。」
それが三十年生きて来たアンドロイドなのだろうか?
「──きっと、もっと人になれる。どこにも行くな、あおい、ずっと俺の傍に。」
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