【激情】

22/28
前へ
/81ページ
次へ
あおいは頷いた。 「嬉しい……私、本当に嬉しいです……。」 もう一度涙が零れた。 「でも、お別れです。私はもう破壊されます。」 「止める方法は?」 「ありません。盗難から戻されたとしても、一度起動した自爆装置は止められないんです。あらゆる危険を回避する為です。」 「そんな……っ!」 廃棄処分をされたくなくて、連れ出したのに……! もし、恋人が自殺すると言ったら。 言葉と行為を尽くして止めるだろう。 抱き締めて、しがみついて。死なないでくれ? お前が必要だ? お前が逝くなら俺も逝く? でも、あおいは淡々と『破壊される』と言うんだ、それを受け入れてもいる、そんな人をどうしたら止められる? 「幸せでした。」 あおいは儚く微笑んで言う。 「最後の最後で、隆信に逢えてよかった。隆信が私を人にしてくれた、隆信だけが愛してくれた、本当に、本当に……もし私に魂があったら、きっと天国に行けると思います。」 「逝くなよ……!」 「回避はできません。」 あおいは、本当に哀しんでいるのかと疑うほど、淡々と言う。 「さようなら、隆信、こんな気持ちを愛していると言うんだと判ります。」     
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加