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このままフローリングの床でと言う訳にはいかない、俺は考えあぐねて、唯一のタイル張りの玄関へあおいの体を運んだ。爆発は既に股関節や首にまで達している。
体内の主要個所もあるのだろう、こもった爆発音が続いた後、数か所から炎が上がる。
バンバン燃え上がる訳ではない、それでも内部には燃焼する素材が仕込まれているのだろう、全身を煙と弱々しい炎が包み込み、シリコン製の肌は床にずり落ちた。
涙が落ちた。
飼っていた文鳥が死んだ時より哀しかった、親が死んでもこんなに辛くないのでは思えた。
目の前の愛した人は、ただのモノとなり果てた。黒焦げた金属の塊は、人のような形を保ったまま、そこに転がっている。
周囲に焦げた匂いが立ち込める中、俺はそれを膝を抱えたまま見つめていた。
──早く、あおいに新しい体をみつけないと。
あまり長い時間電源を繋がないと、データを消失する恐れがあるから……そう思っても、俺はそこから動けなかった。
どれほどの時間が経ったのか、野村さんが用意してくれた電話が鳴った。
何度も何度もコールされて、俺はようやくのろのろとそれを手に取った。
「……はい」
『ああ、悪い、寝てたか?』
野村さんの声に時計を見た、まだ朝の八時だった。
「……いえ……。」
『あおいの処分が決まった。』
そんな声にどきんと心臓が跳ね上がる。
「……え……?」
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