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二時間後、俺は所轄の警察署の遺体安置所にいた。
野村さんは担当刑事だ、一言、二言会話をしただけで中に入れた。
真っ暗だった、ただでさえ遺体安置所なんて薄気味悪いのに……野村さんも怖かったのだろう、ドアを閉めるとすぐに電気をつけてくれた。
「──どなた?」
女性の声がした。
「藤谷と言います、少しお話をいいですか?」
「藤谷……?」
確認するような声がして、彼女は上半身をむくりと90度起こした、予備動作もないところが、ロボットなんだろう。
「はじめまして。」
俺を視界に収めた『あおい』は、口元だけ微笑ませて挨拶をする。
「初めまして、あおいさん。君、破壊処分になったのは知ってる?」
「はい。私は自分で破壊することはできません。だからとても嬉しいです。」
彼女は淡々と言った、死にたい、って事か。
「ご主人と、いたいんだね?」
「ロボットが天国に行けないのは知っています、それでもあの人がいない世界なんていてもしかたない。」
「リカバリーされて、新しい人格を植え付けられて、別のアンドロイドになれるのに?」
「私は和也さんを忘れません。」
俺はにこっと微笑んでいた。
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