チェリーの庭

記憶

なんだか急に、本当に急に思い出した。
チェリー・・
一緒に過ごしたことがほとんどない人の吸っていた煙草、ワイン色のパッケージ・・
そんな事だけがなぜか記憶に残っていた。

その人は時々ふらりと現れる。まるで自分がそこにいるのが当然というように。そのくせ、その人が現れるのはいつも決まって家にアタシの家族が誰もいない時。そして、色んな植物がぎっしりと、それでも割とお行儀良く並んで植えられているその庭に一人水やりする人。
小さな小さな庭にはゼリービーンズみたいな池があって、その向こう側に緩い弓形の、人が一人歩けるくらいの小径が作ってある。その小径の両脇に色々な植物たちが並んでいた。