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夕方の雨
今日は運がいい。
教室の窓の外に降る雨を見ながら
そう心の中で呟いた。
「風花!一緒に帰ろ!」
北山風花(きたやま ふうか)
高校2年生のある秋の日のこと。
「あ、晴菜(はるな)。
てか一緒に帰ろっていつも帰ってるじゃん。」
廊下に出てすぐ呼び止められたけど、そんなことしてくれなくても毎日下駄箱で待ってるし。
......あ。
「晴菜今日傘忘れちゃったんだよね~」
「出た。言うと思った。」
あはは~と照れるように笑う。
いや、褒めてないからね。
晴菜は昔からこうだ。小学校からの仲だから知ってるの。明らかに雨の降りそうな日でも100%家に傘を忘れてくる。
ある意味天才。
「今日みんな持ってないんだよ?
でも風花ならって思って!持ってる?」
「当たり前。しかも
こういうことを想定して今日は2つ。」
「最高大好き!!」
「いや、傘貸してくれるだけで大好きとか言わないの。晴菜の愛は安すぎるんだって。」
「でもさー何で朝降ってなくても持ってんの?
昔から天気当ててるってことでしょ?」
「雨が降る空は見れば分かるの。」
それ才能だよ~!
天気予報士になった方がいいよ~!
なんて、楽しそうに笑いながらそう言う。
『晴菜』って名前に合いすぎた性格。
いつでもどこにいても元気で、周りを巻き込んで明るくさせる。
晴れ女には雨なんて通用しない。
降っても平気でいるんだから。
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