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ピシャン、ピシャンと地面が鳴る。
晴菜はわたしの貸した白と紺の水玉模様の折り畳み傘を差しながら楽しそうに隣を歩いている。
「水たまりよけて歩いてよ。」
「何で?いいじゃん楽しいよ?水たまり踏むの!」
「もー......
いつまで経ってもそうだよね晴菜って。
だから靴下濡れんだよ。」
「あ、ほんとだ。」
えへへとまた照れ笑いをするから
呆れた、と溜息をついた。
まあ、こういう子供っぽいところも
晴菜の魅力ではあるけれど。
「もうそろそろ大人になってよね。」
「晴菜背はまだ伸びてるんだよ~?」
「そんなことは聞いてません。」
そうやって歩いているうちにいつもの別れ道に出た。
不思議と、昔から雨の日は時間が経つのが早い。
晴菜は電車通学だから
駅へ続くこの道を真っ直ぐ行く。
わたしの家は学校から歩いて30分もあれば着くから電車に乗る必要はない。
周りの友達は大体みんな電車通学で近くて羨ましいと言われるけど、わたしに言わせれば電車通学だって十分に魅力的だ。
この道を右に曲がって踏み切りを渡る。
それがいつもの帰り道だった。
「バイバイ風花!傘ありがとね!」
「いいよ。また明日!」
「うん!」
雨音の中で交わした会話と一緒に
遠ざかる晴菜の背中を何となく見つめた。
それから思いもよらずに
パッと振り返った晴菜を見て
気が付いたら自然と笑みを零していた。
そうしてまた
雨音を掻き分けて歩き出した。
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