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晴菜と別れてしばらく歩いてから
いつも通る道をその日のわたしは曲がらずに
ひとり、真っ直ぐ川の方へと向かっていた。
何となく。
多分、雨が降ったからだと思う。
わたしの予想が天気予報に打ち勝って夕方のうちに降り出したから。
別に好きなわけじゃない。
そもそも、雨が好きなんて人滅多にいないだろう。
外にいても部屋の中でも空気はじめじめするし
傘を差して歩くのは面倒だし。
特に今日みたいな突然の雨には傘を忘れて困ってる人も多いだろう。晴菜みたいに。
まあ、あの子はいつものことだけど。
橋を渡る。
川の水はいつもの倍以上に増えていて、緑がかったような濁った色をしていた。
それでもその水面はキラキラ光っていて。
まるで久しぶりの雨を喜んでいるみたい。
川沿いの草木も
いつもより生き生きして見える。
すれ違うのは傘を差して俯いた人ばかりなのに
わたしは真っ直ぐ前を向いていた。
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