6人が本棚に入れています
本棚に追加
赤信号だった。
渡るためにその色が変わるのを待ちながら
ただぼーっと、視線の先にいるその彼を見ていた。
白いシャツにネクタイを締めていたから
きっとどこかの会社員だろうと初めはそう思ってた。
でも見れば見るほど、その考えは薄れていった。
.......若い。
どうしてこんな時間に?
何でこんなところにひとりで?
駅からは大分距離があるのに。
イヤホンをプレーヤーに巻きつけながら
一人でそんなことを考えてた。
なぜだか目を引いたから。
多分あの人はまだ、わたしが視線には気づいていないけど。
傘に当たる雨の音が強まっていく。
いくつかの疑問が頭を巡るけど
それよりずっと、気になっていた。
......あの人、傘を持ってない。
最初のコメントを投稿しよう!