夕方の雨

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赤信号だった。 渡るためにその色が変わるのを待ちながら ただぼーっと、視線の先にいるその彼を見ていた。 白いシャツにネクタイを締めていたから きっとどこかの会社員だろうと初めはそう思ってた。 でも見れば見るほど、その考えは薄れていった。 .......若い。 どうしてこんな時間に? 何でこんなところにひとりで? 駅からは大分距離があるのに。 イヤホンをプレーヤーに巻きつけながら 一人でそんなことを考えてた。 なぜだか目を引いたから。 多分あの人はまだ、わたしが視線には気づいていないけど。 傘に当たる雨の音が強まっていく。 いくつかの疑問が頭を巡るけど それよりずっと、気になっていた。 ......あの人、傘を持ってない。
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