伯爵夫人、暴行罪でマルチーズ犬を訴える

12/15
前へ
/69ページ
次へ
「今すぐ裁判所に行かなきゃ! そこのあなた! 犬を連れて、私と一緒に裁判所まで来てちょうだい!」  シャラント伯爵夫人は、マルチーズ犬を抱いているサラにそう言ったが、突然の意味不明な展開に困惑しているサラは「姫様、どうしましょう? 変な事件に巻きこまれてしまいました……」と言いたげな困り顔をして、マリーを見つめた。でも、マリーだってどうしたらいいのかわからないので、眉をひそめて黙ることしかできない。 「何をもたもたしているの! 一緒に来てくれないのなら、私が首根っこをつかんで犬を連れて行くわ! その犬を私に渡して!」  怒り爆発してもうどうにも止まらないシャラント伯爵夫人は、ぐわっと手をのばし、すでに大人しくなっているマルチーズ犬の首根っこをつかもうとした。しかし、動物好きの少年が犬と夫人の間に割って入り、「待ってください!」と言ったのである。 「動物を裁判にかけるというのならば、僕の出番だ。この可愛らしいワンちゃんの弁護は僕がしよう」 「動物を弁護ですって? あなたは何者なの?」 「僕の名前は、シャサネン・セギエ。動物の弁護を得意とする弁護士だ」  犬が裁判にかけられると思ったら、次は動物の弁護士の登場だ。  「いったい何がどうなっているの?」と、マリーは首をかしげるのであった。          次回「マルチーズ犬、法廷に立つ」につづく
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加