7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ケンカはダメよ、サラ。それこそトラブルのもとだわ。たしかに、道ばたにゴミを捨てるのはよくないことだけれど、ゴミを捨てた人もわざと私にゴミをかけたわけではないはずよ。私の運が悪かったのよ」
「ですが、姫様……」
呼び止められたサラは振り返り、マリーを見た。そして、ギョッとしたのである。でっぷりと太ったブタがマリーのそばに寄って来て、マリーの服にこびりついている野菜くずや果物の皮などの生ゴミを食べ始めたのだ。
「ひ、姫様! ぶ、ブタが……」
「え? うわわっ!」
おどろいたマリーは飛びのいたが、ブタはブヒブヒと鼻を鳴らしながら追いかけて来て、なおもマリーの服についているごちそうを食べ続けた。サラが「しっ! しっ!」と手をはらい、猫のニーナも毛を逆立てながら「シャーっ!」と威かくしたが、ブタは食べるのに夢中でマリーから離れようとはしなかった。
この時代の人はブタなどの家畜を放し飼いにしていることが多くて、マリーの故郷の城下町でも市場を堂々と歩くブタがいたから、マリーとサラも「どうしてブタがこんな街中に?」とは思わなかったが、それにしても丸々と太ったブタだった。
「こらこら、グルートン。マドモワゼル(フランス語でお嬢さん)がお困りだ。よさないか」
最初のコメントを投稿しよう!