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「きゃーーーっ! い、犬が飛びかかって来たわーーーっ! 助けて~!」
シルクのように美しい毛を持ち、シッポにピンクのリボンがついている小さな犬が馬車から飛び出て来て、たまたまそばを通りかかったド派手な服装の貴婦人の顔にダイブしたのである。ビックリ仰天した貴婦人は、ドターンと大きな音を立てて、すっ転んでしまった。
「まあ大変! だいじょうぶですか?」
マリーたちがかけつけると、貴婦人は「犬を……犬をどけてちょうだい!」とヒステリックにわめいた。
「こんなにも可愛らしいマルチーズなのに、そんなにおびえなくても……」
少年はそう言いながら、貴婦人の顔の上でお座りしていたマルチーズ犬を抱き上げた。そして、「おお、よしよし。いい子だ、いい子だ」と、マルチーズに頬ずりをして柔らかな毛の心地良さを思いっきり堪能しようとした。
マルチーズは「うざこいなぁ」と言わんばかりに抵抗して暴れ、少年の腕からするりとぬけ出し、マリーの足の後ろに隠れた。
「動物が好きだと言うわりには、動物には嫌われやすいんですね、あなた。それにひきかえ、姫様はこのワンちゃんになつかれたみたいですね」
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