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見た目だけ、と言われた当の千花はムッとした表情でドリンクのストローをがじがしと噛む。けれども、友人達の褒めているのか貶しているかの会話はとどまることを知らなかった。
髪の長さは上下する事はあれども、くせっ毛がいい具合に内巻きになり、ふわふわとした印象を与える。つけまつげも必要のない程のボリュームのある睫毛に縁取られた瞳は、小型犬を思い出させる愛らしさ。いつもほんのりピンクの頬は千花の笑顔を百倍にも千倍にも引き立てた。小さいわりに高い鼻は、興奮するとひくひくと震え、ウサギみたいだと直哉や友人達にいつも揶揄われた。そして、オレンジのリップに彩られた唇は、ぷわんと膨らんでいて見た目だけでも柔らかいと窺い知れる。
そこから飛び出る毒舌もしくは厳しい正論(友人談)さえなければ、千花は本当にお姫様のようだった。
「やめてよ。そうやっていつも揶揄って」
「ごめんごめん。でも、まぁ、直哉先輩は無いわなー」
「確かに!」
けれど、悲しいかな。この話には必ずと言っていいほどオチがつく。
「だって、直哉先輩」
「ねぇ」
「残念王子、だもんねーーー」
いつもの様に友人達の声が揃い、明らかにバカにした様子で笑みを向けられる。そして、この話のオチはもう一つある。
首を軽く傾け、組んだ手の上に顎を乗せ、千花はお姫様と言われる所以の笑みを浮かべてこう返答した。
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