毒舌姫も残念王子もおたがいさま

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毒舌姫も残念王子もおたがいさま

 呆然とする千花を直哉は引きずり、いつものように帰宅する。その後、直哉の作った夕飯を食べ、お風呂に入り、さぁ寝ようという所で千花は我に帰った。 「ちょ!直哉くん!待って!おかしい!」 「え?何?寝ないの?あの男のことは片付いたし、おかしいのは千花ちゃんじゃなくて?」 「違うし!おかしいのは直哉くんの魚好き……って違う!あぁん!もう!」 「違うのが違うの?」 「だーかーら!」  何も分かっていない直哉は、眠そうに欠伸をしつつ、一人慌てる千花をじっと見つめる。そして、話の纏まらない千花の腰を引き寄せ、無理やりベッドの中に押し込める。 「っ!ちょ!」 「顔色が悪い。今日は色々あったんだから無理しないの」  直哉の行動に、腕を伸ばしたり脚をバタつかせたりして千花は抵抗していた。しかし、直哉の優しさに再度触れ、止まった涙がじんわりと浮かび上がる。それと同時に無駄な抵抗は止めた。 「……っ、ぐす」 「千花ちゃん?」 「……直哉くん、ごめんね……」 「え?」 「……ずっと、直哉くんの優しさに甘えていてごめんなさい。男の人がみんな直哉くんみたいに優しい人じゃないって気がついたの」  今日思った事を一つずつ言葉にしていく。改めて話すということは、勇気のいることだった。千花が考えた事をが伝わるようにゆっくりと言葉にする。途中、涙と嗚咽で言葉が途切れ途切れになる事もあった。しかし、直哉はそれを止めたりすることなく、千花を抱いたままじっとそれに耳を傾けていた。 「うーん……」 「直哉くん?」 「あ、ごめん。俺が優しいって事に気がつくのは他の男と接触があったってことでしょ?やだなぁって思ってて」 「……へ?」 「ま、それでも俺がいいって分かったからよしとするか」 「……」  何だか凄いことをさらっと言われた気がする。それを指摘するのは何故か憚られた。突っ込んだら危ない、という千花の本能が働いたのかもしれない。 「千花ちゃんから初めて好きって言ってもらったし。まぁ、悪い日じゃなかったな」 「……へぁ?」
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